演奏会評

20日夜、いずみホールにて、萬谷衣里さんのピアノリサイタルがありました。21日からの宝塚での本番のリハーサルが早く終わり、全てのプログラムを聴くことができました。演奏会後の環状線の遅れには、イライラしましたが、多くのお客様と気持ちよく音楽を聴くことができました。
彼女の演奏は約10年前から聴く機会があり、アドバイスさせて頂くことがあったため、彼女がリサイタルを行うようになってからは、出来るだけ足を運ぶようにしています。
今回の演奏で、彼女の音色のレパートリーが、ますますひろがっていたことが、非常に嬉しく思いました。明らかに二年間外国で勉強された成長のあとだと思います。リストのハンガリー狂詩曲や、バルトークソナタで魅せた優れた技巧、シューベルトブラームスでの弱音の美しさ…全ての曲は素晴らしい出来映えでありました。
彼女のリサイタルを聴いて、リサイタルのプログラム構成の難しさを改めて感じました。どういう風に聴衆を引き付けるか、これはリサイタルを組み立てる大事なポイントだと思います。調性、リズムのバランスを考えた上で、お客様のよく知っている曲をどこにもってくるかは、大きな問題だと思います。今回の場合、お客様のよくご存知のリストのハンガリー狂詩曲が、後半の真ん中に置かれ、前はブラームス、最後はバルトークソナタだったのですが、近代曲は後半の頭にやって、そのあとブラームスでしっとりさせて、最後にリストで盛り上がる方が良かったのではと感じました。彼女のリストがあまりにもいい音楽だったのでもったいなく思ったのです。付け加えると、衣装、舞台での動きひとつひとつ…二時間全てがリサイタルであるということを更に感じて頂き、彼女の更なる飛躍を心から願います。素晴らしい演奏ありがとう!